採用ノウハウ記事

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【違反に注意!】人事担当者は最低限知っておきたい「求人広告のルール」

求人広告の作成をはじめとする採用活動のルールは、男女雇用機会均等法などの法律で具体的に定められています。

基本的人権の一つである「職業選択の自由」を尊重し、適性や能力に合った仕事や職業に就く機会を等しく提供するためです。

例えば、年齢や性別で選考基準に差を設けたり、家庭構成や本人の生活環境を応募条件に設定したりすると、ルール違反となります。

ルールの遵守はもちろん、採用したい人物像を幅広い視点でイメージすることも、多様な人材を活用して企業価値を高めるには大切です。


目次[非表示]

  1. 求人募集で禁止されていること
  2. 求人広告を出すときのルール
  3. 求人広告の表現に要注意
  4. まとめ:求人広告の何気ない表現が法律違反になる可能性も






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求人募集で禁止されていること

求人募集で禁止されていることは、大きく分けると「年齢制限」「性別による差別」「最低賃金を下回る条件提示」の3つで、人事担当者は熟知しておかなければならない内容です。

禁止事項に1つでも該当する求人広告は労働に関する各種法令に違反するため、求人サイトや求人誌に掲載されません。

特に、ハローワークでの求人申込時に禁止事項が見つかった場合は、募集内容の見直しを指示されます。

求人募集で禁止されていることの詳しい説明に先立ち、厚生労働省が公表している「採用選考時に配慮すべき事項」を簡単にチェックしておきましょう。

採用選考時に配慮すべき事項

厚生労働省では、就職する機会を平等に確保する目的で「採用選考時に配慮すべき事項」を定めています。

同和問題に起因する就職差別の解消が制定の目的ですが、人材の多様化に伴い、女性をはじめ障害者や在日外国人・性的マイノリティ(LGBTQ+)などの排除を防ぐ機能も加わっているのが特徴です。

2020年秋からは、性別欄を設けない履歴書が流通し始めました。

配慮すべき事項は大きく3つに分類されていますが、本人の職業適性や能力とは基本的に無関係とされています。

求人応募への抑止力にもなり得るため、求人広告への掲載可否については慎重な検討が必要です。

参考:厚生労働省「公正な採用選考をめざして(令和2年度版)

本人に責任のない事項の把握

居住地や通勤時間を応募条件に設定すると、家族構成や住宅状況の間接的な把握につながる可能性があります。

業務の必要性がある場合を除いて、応募条件の設定を控えるのが賢明でしょう。

なお、応募者への先入観を少なくするために、履歴書の写真添付を求めない企業が出始めています。

思想・信条にかかわることの把握

志望動機や入社後の意気込みを把握する目的で、応募時に人生観や生活信条(モットー)に関する作文を書かせる事例があるようです。

作文の提出を求める場合は、思想や信条に直接かかわらないテーマを設定しましょう。

採用選考の方法

応募段階で過去の病歴の申告を求めると、病気自体が持つイメージによって不採用にされるのではと応募者に懸念を持たれてしまう可能性があります。

募集広告に身体条件を掲載する必要性を十分に検討する必要があるでしょう。

なお、実務では面接当日に応募者の健康状態を会社書式で申告させる事例が増加傾向です。

年齢制限は禁止

労働者の募集や採用に関する年齢制限は、後で紹介する例外を除き、労働施策総合推進法によって禁止されています。

労働者個々が持つ適性や能力を発揮できる機会が、年齢によって阻害されることを防ぐためです。

例えば、重量物を取り扱う業務では体力のある若手が有利と思われがちですが、作業工程や設備の改善で体力面の問題を解消でき、高い年齢の人も活躍できるようになるかもしれません。

反対に、管理職候補として50歳以上の人を募集していたが、偶然入社した30代後半の社員の能力が高く、現場で強いリーダーシップを発揮する事例もあります。

仕事の適性や能力は年齢だけで判断できないため、人材募集の応募条件を年齢で線引きすると、企業が優れた人材に出会える可能性が下がることもあるわけです。

労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
第9条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)

事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

例外として認められる例

採用年齢の上限を定年年齢としたり、就職氷河期世代の採用を促進したりするなど次の条件を満たせば、例外的に年齢制限が認められます。

区分
年齢制限の目的
条件

例外事由1号

 定年年齢未満の労働者を募集
 無期雇用契約で募集

例外事由2号

 法令の規定による年齢制限
 警備業務や危険有害業務が主な例

例外事由3号(イ)

 長期勤続によるキャリア形成
 おおむね45歳未満の人を無期雇用契約で募集。下限年齢の設定は不可

例外事由3号(ロ)

 特定職種で技術・ノウハウを継承する目的で、特定年齢層を穴埋め
 30~49歳のうち、特定の5~10歳幅で設定。周辺の年齢層と比べて労働者数が2分の1の場合に認められる

例外事由3号(ハ)

 術・芸能分野での表現の真実性
 モデルや役者を想定

例外事由3号(ニ)

 高齢者や就職氷河期世代の募集
 特定の年代層を対象とした募集
高齢者募集では下限年齢のみ設定可。特定の年代層を対象とする場合は国の施策活用が条件


性別による差別は禁止

労働者の募集や採用に関する性別による差別も、一部の例外を除き男女雇用機会均等法で禁止されています。

女性に対する差別・男性に対する差別どちらも禁止対象です。

身長や体重・体力を応募条件に設定したり、特定の職種への採用条件に転居・転勤の要件を定めたりすることも、特定の性別に不利益を余儀なくさせる間接差別として禁止されています。

例えば、店舗での接客業務に携わる人の身長を155cm以下に設定すると、条件を満たすのは女性が多いとして間接差別に該当するでしょう。

あるいは、宅配便のドライバーの体重を65kg以上に設定すると、女性がドライバー業務に参入しづらくなるかもしれません。

男女差にとらわれない採用条件の決定が、多様な働き方の実現につながるでしょう。

男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)
第5条(性別を理由とする差別の禁止)

事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

法違反にならない例

深夜業など女性の就労に法令での制限がかかる場合や、助産師のよう男性の就業が法的に不可能な場合には、男女雇用機会均等法に違反しません。次の条件に該当する場合は、法違反に該当するかしないかの個別判断が必要となるため、職場を管轄する労働局の雇用環境・均等室への相談をおすすめします。

・芸術・芸能分野での、性別による表現の真実性が求められる場合
・防犯上の要請から男性の従事が必要な業務(警備員など)
・宗教上・風紀上など業務の性質上、男女いずれかの性が従事しなければならない職務
・風俗や風習の違いで、男女のいずれかが能力を発揮しづらい国での勤務
・その他特別な事情がある場合

さらに、男女間での役割分担の格差解消や均等な雇用機会の確保を目指す「ポジティブ・アクション」の実施も法違反として取り扱われません。

最低賃金を下回る求人

最低賃金額を下回る求人は法令に違反するため、掲載が禁止されます。

最低賃金を下回る賃金で労働者を働かせることは、最低賃金法や労働契約法に違反する行為だからです。

最低賃金は都道府県や産業別に定められており、産業別の最低賃金額が高い場合には、その額が適用されます。

例えば、2020年10月現在の富山県の最低賃金額は849円ですが、百貨店・総合スーパーで働く人には最低賃金額865円が適用されます。

金額についても毎年10月に見直されるので、厚生労働省の最低賃金特設サイトで確認するようにしましょう。

なお、障害者雇用や手待ち時間の長い断続的業務の場合に、労働基準監督署長の許可を得て最低賃金額以下の設定ができる例外が設けられています。

例外の適用にあたっては、労働者個別の事情を考慮した判断が行われるため、条件に該当しそうだからといって最低賃金額を下回る賃金を求人広告の段階で提示するのは不適切です。

労働基準法
第24条(賃金の支払い)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

最低賃金法
第4条(最低賃金の効力)
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

>最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。

この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

求人広告を出すときのルール

求人広告は、仕事を探している人が募集企業への応募を検討する重要な資料となります。

そのため、法令の遵守はもちろん、職場環境を含む労働条件を正しく伝えることが重要です。

求人広告に必ず載せなければならない内容、あるいは掲載を差し控えなければならない内容は、公益社団法人全国求人情報協会の「求人広告掲載基準」で公表されています。

その基準についても確認しておきましょう。

求人広告掲載基準について

求人広告掲載基準は「事前確認項目」「留意表示項目」「募集条件表示基準」の3つに分けられており、求人メディア各社では掲載に先立ち、これらの基準に基づいて広告内容を審査しています。

自社の求人サイトやチラシ類も、応募のきっかけを提供する「広告」にあたるため、この基準に沿った対応が求められるでしょう。

参考:公益社団法人全国求人情報協会「求人広告倫理綱領・求人広告掲載基準」

事前確認項目

事業内容や募集内容が法令に違反する場合は、求人広告の掲載を差し控えなければならないとされています。

均等な雇用機会を確保する趣旨に反する内容や、実際の労働条件と異なる内容が、掲載差し控えの主な対象です。

留意表示項目

求人広告は誰でも理解できるよう、わかりやすい表現を用いる努力が求められています。

データ更新日や広告の掲載期間といった、情報の有効期間を明確にする配慮も必要です。

募集条件表示基準

応募資格や賃金をはじめとする労働条件の明示が求められており、掲載が必須な「掲載明示項目」と任意の掲載で差し支えない「掲載明示促進項目」に分かれています。

求人広告を見た人が職場への理解を深められるよう、職場の人間関係や職場の雰囲気も掲載するとよいでしょう。

労働条件を明示する

労働条件は仕事を探している人にとって応募の決め手となるため、正しくわかりやすい情報提供が大切です。

職業安定法に基づく指針でも定められている、求人広告への明示が必須化されている項目について説明します。

業務内容

応募者が、自分の持つ適性や能力を発揮できるかを判断するための項目です。

職種だけでなく、業務の流れを踏まえて内容を具体化しておくと、入社後のイメージを描きやすいでしょう。

雇用形態と契約期間

期間を定めて雇用する場合は、雇用契約の開始・終了年月日を明示します。

契約更新を予定している場合は、更新基準の記載も必要です。一方、正社員や無期雇用労働者については「期間の定めなし」の記載で差し支えありません。

雇用形態も明記しておくと、適用される労働条件を巡るトラブルを避けられます。

試用期間の有無

試用期間を設ける場合は、その期間を明記します。3か月あるいは6か月が一般的ですが、長すぎる試用期間を設定すると労働者の身分が安定しないとして、社会通念上無効とされる可能性があります。

パートやアルバイトの場合は、勤務回数で試用期間を定めるのもよいでしょう。

就業場所

就業場所の住所は、応募者にとって家庭と仕事を両立できるかを検討する材料の一つです。

複数の職場を掛け持ちを予定している場合は、主な勤務場所を明示します。テレワークを許容する場合は、自宅勤務を認める旨も明記しておきましょう。

就業日時や休日

勤務する曜日・時間帯や休日を明示しますが、シフト制を採用する職場では「個人ごとに定めるシフト表による」という記載でも差し支えありません。

時間外労働が見込まれる場合は、月平均の時間数の明記も必要です。

賃金

最低賃金法に違反しないよう、適正な額を定めます。

固定残業代制度を適用する場合は、残業代の計算ベースとなる基本給と、固定残業の時間数と残業手当額の明示が必要です。

試用期間中の給与を定めている場合には、その金額も記載しておきましょう。

加入保険の種類

労災保険・雇用保険・厚生年金・健康保険への加入有無について記載します。

なお、労災保険は勤務日数や時間数にかかわらず加入が必須(強制加入)です。

求人募集者の氏名・名称

求人広告を作成した責任の所在を明確にするため、募集企業の名称(個人事業主の場合は事業主の氏名)を明記します。






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求人広告の表現に要注意

先程説明した禁止事項に触れないよう、求人広告の内容が適切かどうか、採用選考時に配慮すべき事項に反する表現を用いていないかなどを、掲載前に細かくチェックする必要があります。

求人広告には好ましくない表現と、適正な表現のサンプルを紹介します。

年齢を制限する表現

年齢制限の例外が認められている場合を除き、応募年齢の制限があると解釈できる表現は禁止されています。

求人広告内に「年齢不問」と表記していても、「40歳以下の方歓迎」「30歳以上の方歓迎」といった具体的な年齢を示すと、他の年代からの応募を阻害する恐れがあります。

「30代が活躍できる職場です」という表現も、年齢の先入観を与えがちなので控えた方がよいでしょう。

在籍社員の年代を広告で表記したい場合は、募集部門でいちばん若い社員と最年長の社員の年代を表記する方法もあります。

「20代から60代まで、さまざまな年代の社員が活躍」と表記すると、事実上すべての年代をカバーできるため、法違反のリスクは低くなるでしょう。

技能・ノウハウを継承するため(例外事由3号ロ)、特定の年齢層に絞って募集を行う場合は、30歳~49歳の中で特定の5歳~10歳幅の年齢指定が可能です。

この場合「35歳~45歳」という表記は可能ですが、「30歳~40歳」と表記すると、例外条件から外れるので違反となります。

性別を制限する表現

特定の性別を採用対象としていると受け取れる表現も、禁止されています。

同じ職種で男性名詞と女性名詞が異なる場合は、性別を想像させない職種への言い換えも効果的です。

NGワードとOKワード(言い換え例)を確認しておきましょう。

NGワード
OKワード(言い換え例)
ウェイター
フロアスタッフ ウェイター&ウェイトレス
営業マン
営業担当者 営業スタッフ
ガードマン
警備員 セキュリティスタッフ
女医
医師

子育てと両立できる職場をアピールしようと「ワーキングママ歓迎」と表現するのもNG事例です。

「ワーキングママ活躍中」「子育てと両立できる職場」というように、事実をありのまま表現すると、職場環境のアピールにもつながり有効です。


まとめ:求人広告の何気ない表現が法律違反になる可能性も

求人広告の作成では言葉の表現だけでなく、年齢や性別に関する表記などへのきめ細かな配慮が求められます。

普段使っている言葉を求人広告に載せた結果、法令違反となってしまう事例も少なくないようです。

応募者の適性や能力を正当に見極め、企業に適した人材を獲得するためにも、広告で使う言葉を慎重に選びましょう。

ハローワークの担当者や身近な採用業務経験者に、求人広告の表現方法について相談するのも有効です。

求人広告を正しく作成し、自社採用サイトの魅力を高めるには採用マーケティングツールの活用が効果を発揮します。

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